3月は、いよいよ所得税の確定申告・納税の最終期限があります。この時期は、1年間の会計・税務の総仕上げであり、個人事業主の皆様にとっては1年間を振り返ったり、納税額の高さに驚き、法人設立を検討し始める時期ではないでしょうか。本題の確定申告は、期限ギリギリになって慌てることのないよう、そして申告漏れや納税忘れといったミスを防ぐためにも、今一度スケジュールとやるべきことを確認し、計画的に進めていきましょう。今回は、「3月にやるべきこと」として、主に申告と納税の最終確認ポイントを解説します。1. 所得税及び復興特別所得税の確定申告・納付期限(3月15日)なんといっても3月の最重要イベントはこれです。申告期限:原則として3月15日納付期限:原則として3月15日最終チェックポイントリスト:申告書を提出する前、納税手続きを行う前に、以下の点を最終確認しましょう。□ 計算ミスはないか? 売上、経費、所得控除、税額控除など、すべての計算が正確か再確認しましょう。会計ソフトを利用している場合でも、入力ミスがないか、おかしな数値になっていないか、といった最終チェックは重要です。□ 添付書類は揃っているか? 青色申告決算書(または収支内訳書)、各種控除証明書(生命保険料控除証明書、医療費の領収書、寄付金の受領証など)、必要な書類がすべて揃っているか確認しましょう。特に住宅ローン控除のために確定申告を行う場合には、添付書類が全て税務署で確認できないと手続きが完了しません。入念に確認をしましょう。□ 提出先税務署は間違いないか? 個人の場合は、原則として納税地(通常は住所地)を所轄する税務署です。□ 申告書の控えは必ず保管! 2025年より申告書や届出書を紙で提出しても、受領印が押された控えの発行を受けられなくなりました。後日、融資の申し込みや各種証明で必要になることがありますので、e-Taxで電子申告することをお勧めします。電子申告の場合には、受信通知と申告データが保存できますので、紙で提出した場合の受領印済みの申告書控えと同じ効力があります。提出方法の選択:e-Tax(電子申告): 自宅や事務所からインターネット経由で申告できます。近年はe-Taxを利用すると青色申告特別控除額が55万円から65万円へ増額されるなど、メリットも大きいためおすすめです。郵送: 信書便として、管轄の税務署に郵送します。締切日の通信日付印有効です。税務署の窓口へ持参: 税務署の開庁時間内に提出します。時間外に提出する場合には税務署入口に設置されている受領BOXに投函しましょう。納税方法の選択:振替納税: 指定した預貯金口座から自動的に引き落とされる方法です。事前に「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を税務署に提出しておく必要があります(通常、申告期限までに提出)。一度手続きをすれば、翌年以降も継続されます。クレジットカード納付: 「国税クレジットカードお支払サイト」を通じて納付できます。決済手数料が相応にかかりますが、ポイントが付与される場合もあります。コンビニ納付: 税務署から送られてくるバーコード付き納付書、またはQRコードを利用してコンビニエンスストアで納付できます(納付額30万円以下の場合)。金融機関または税務署の窓口で納付: 現金に納付書を添えて納付します。もっともベーシックな納税方法と言えます。いずれの方法も、納付期限(3月15日)を厳守しましょう。期限を過ぎると延滞税が課される可能性があります。2. 個人事業主の消費税及び地方消費税の申告・納付期限(3月31日)課税事業者の個人事業主の方は、事業の所得等に対して課税する所得税と、消費税及び地方消費税の申告と納付の期限が異なるので注意が必要です。なるべく消費税の申告書も所得税の申告書と合わせて申告することをお勧めいたします。申告・納付期限:原則として3月31日ご自身が消費税の課税事業者であるかを改めて確認し、該当する場合は忘れずに申告・納付を行いましょう。特にインボイス制度開始後、免税事業者から課税事業者に転換した方は、初めての消費税申告となる場合もありますので、注意が必要です。また、消費税の納税義務の判定は非常に複雑です。ご自身が該当しているか否か判断がつかない時は、税務署または税理士事務所へご相談されることをお勧めいたします。3. 社会保険関連:年度末と新年度への準備3月は年度末にあたるため、従業員の退職や、4月からの新入社員の受け入れ準備など、労務関連の手続きも発生しやすい時期です。従業員の退職に伴う健康保険・厚生年金保険の資格喪失手続き4月入社予定者のための社会保険加入手続きの準備労働条件の確認、雇用契約書の準備これらの手続きを漏れなく行い、スムーズな新年度のスタートを切れるようにしましょう。まとめ:3月は税務・労務の「締め」と「次への準備」の月3月は、所得税の確定申告・納税という1年間の大きな区切りを迎える非常に重要な月です。期限を守り、正確な申告・納税を完了させることは、経営の信頼性を高め、事業を安定させるための基礎となります。また、消費税の申告・納税や、社会保険関連の新年度準備など、やるべきことは多岐にわたります。一つ一つ着実にこなし、清々しい気持ちで4月を迎えられるようにしましょう。もし手続きに不明な点や、複雑で対応が難しいと感じる部分があれば、無理をせず税理士や社会保険労務士といった専門家のサポートを求めることも賢明な判断です。次回は、新年度がスタートする「4月にやるべきこと」について解説します。