晴れて経営者として独立を果たした皆さん、おめでとうございます!希望に胸を膨らませていることでしょう。しかし、同時に経営の舵取りという大きな責任も担うことになります。特に「お金」との向き合い方は、事業の成長を左右する非常に重要な要素です。プライベートでは節約家で、なるべくお金を使わないことを美徳としている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その感覚のまま経営を行うと、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。経営におけるお金の使い方は、プライベートのそれとは異なる側面があるのです。独立した経営者が持つべきお金のマインドセットについて、特に「無駄の削減」と「事業成長のための投資」という2つの観点から解説します。「守り」のお金:徹底的な無駄の排除まず、経営者として常に意識すべきは、事業における「無駄な支払い」をなくすことです。これは、企業の体力であるキャッシュフローを健全に保つための基本中の基本と言えるでしょう。固定費の見直し: オフィスの家賃、通信費、複合機のリース料金、利用頻度の低いサブスクリプションサービスなど、毎月決まって出ていく固定費は定期的に見直しましょう。よりコストパフォーマンスの高いサービスに乗り換えたり、不要な契約を解約したりするだけで、年間で見ると大きな差が生まれます。変動費の最適化: 仕入れコスト、外注費、広告宣伝費といった変動費も、常に費用対効果を検証する癖をつけましょう。相見積もりを取る、より効率的な方法を模索するなど、小さな改善の積み重ねが利益率の向上に繋がります。「聖域なきコストカット」の意識: 長年の付き合いだから、何となく便利だからといった理由で、惰性で支払いを続けているものはないでしょうか。時には大胆な見直しも必要です。重要なのは、一度見直して終わりにするのではなく、常にアンテナを張り、定期的にチェックする習慣をつけることです。「塵も積もれば山となる」という言葉があるように、一つ一つは小さな金額でも、積み重なれば大きなコスト削減効果を生み出します。「攻め」のお金:未来を創るための事業投資さて、ここからがプライベートの節約志向と大きく異なる点です。経営においては、無駄を省くだけでは不十分です。事業を成長させ、より大きな収益を生み出すためには、未来への「投資」という形でお金を使うことが不可欠なのです。プライベートでの節約は、支出を抑えること自体が目的となることが多いでしょう。しかし、経営における「投資」は、将来的にそれ以上のリターンを得るための戦略的な支出です。これを怠ると、事業の成長スピードは緩やかになり、現状維持どころか縮小均衡に陥ってしまう可能性すらあります。特に中小ベンチャー企業においては、売上規模、従業員数が少なければ少ないほど、経営者が直接業務を行う時間が多くなり、結果的に経営者として検討すべき事業計画や社内体制の強化に時間やお金を避けなくなってしまいます。具体的にどのような投資が考えられるでしょうか。人材への投資: 優秀な人材の採用、従業員のスキルアップのための研修などは、長期的に見て企業の競争力を高めます。特に経営者の方は、創業期は自身が”商品”となることが多いので、最新知識の収集や研修への参加など、忙しいとは思いますが、自分への投資は積極的に行うことが重要になります。マーケティング・広告宣伝への投資: 新規顧客の獲得、ブランド認知度の向上には、適切なマーケティング活動が欠かせません。起業するまでは他社情報を積極的に収集して研究していた方も起業すると忙しくなり、時間を確保できないため他社情報の収集・分析を行わなくなるケースがありますが、継続的に行うことが必要です。自身で行うことが難しい場合には、有料のコミュニティに参加するなどして効率的に情報収集を行うことも大切です。設備・システムへの投資: 生産効率の向上、業務の自動化などを目的とした設備投資やシステム導入は、コスト削減や生産性向上に繋がります。上記でも少し触れましたが、昨今の生成AIの進歩は凄まじく、自社の業務にどのように活用できるか検討を行い、積極的に活用することが重要となります。もちろん、やみくもに投資すれば良いというわけではありません。その投資が本当に必要なのか、どれくらいの効果が見込めるのか、リスクはどの程度か、といった点を慎重に検討する必要があります。しかし、リスクを恐れるあまり必要な投資まで渋っていては、大きな成長は見込めません。「守り」と「攻め」のバランス感覚が鍵経営におけるお金の使い方は、「守り」のコストカットと「攻め」の事業投資、この両輪をバランス良く回していくことが肝要です。無駄な支出を徹底的に抑え、健全な財務体質を維持しつつ、生み出されたキャッシュや戦略的な借り入れによって、未来の成長につながる投資を積極的に行う。このサイクルをうまく循環させることが、事業を継続的に成長させるための秘訣です。事業のフェーズや市場環境によって、守りと攻めのどちらに比重を置くべきかは変化します。創業期であれば、まずはしっかりと足場を固めるためにコスト意識を高く持つことが重要かもしれません。一方、成長期に入れば、シェア拡大のために積極的な投資が求められるでしょう。おわりに独立した経営者にとって、お金は事業を動かし、成長させるための重要な「ツール」です。無駄を省く地道な努力と、未来を見据えた大胆な投資判断、そしてそのバランス感覚が不可欠です。特に、積極的な事業投資を苦手とする方が多い印象です。慎重に判断し、行動する時は行動する。リスクもよくよく検討したのであれば、大きな失敗になることは決して多くありません。経営者として自分の判断を信じて行動してみましょう。今回お伝えしたマインドセットを常に意識し、お金と真摯に向き合うことで、あなたの事業が力強く成長していくことを心から願っています。