新しい年のはじまりは事業の成長を誓う大切な時期かと思います。しかし、経営者は事業計画だけでなく、煩雑な税務・労務手続きも忘れてはなりません。特に1月は、年末調整の締めくくりとも言える重要な手続きが集中する、非常に忙しい月です。「知らなかった」では済まされないこれらの手続きを軽々と乗り越え、スムーズな事業運営のスタートを切るために、年間スケジュールを月ごとに解説していきます。今回は「1月にやるべきこと」に焦点を当て、その内容と目的を分かりやすくご紹介します。1月の主な手続きと提出期限1月の手続きは、主に以下の3つが挙げられます。いずれも提出期限は原則1月31日です。期限間際に慌てないよう、顧問契約をしている税理士事務所と前年末や年明け早々から準備に取り掛かりましょう。法定調書合計表の提出(税務署へ)給与支払報告書の提出(各市区町村へ)償却資産申告書の提出(各市区町村へ、東京23区は都税事務所へ)では、それぞれがどのような制度なのか、詳しく見ていきましょう。1. 法定調書合計表:税務署への年間取引の総まとめ「法定調書」とは、簡単に言うと「誰に、どのような内容で、いくら支払ったか」を税務署に報告するための書類です。代表的なものに、従業員に渡す源泉徴収票があります。昨年1年間に、会社が源泉徴収の対象となる支払い(給与、税理士やデザイナーへの報酬など)を行った場合、支払先ごとに法定調書を作成する必要があります。そして、それらの法定調書を種類ごとに集計したものが「法定調書合計表」です。なぜ提出が必要か? 税務署は、この法定調書合計表と、取引先(個人事業主など)からの確定申告の内容を照合します。これにより、国全体の所得を正確に把握し、適正な課税を実現する目的があります。会社の取引を明確にする、透明性の高い経営に不可欠な手続きです。主な対象となる支払い従業員への給与・賞与(給与所得の源泉徴収票)弁護士、税理士、デザイナーなどへの報酬(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書)個人に対する不動産の使用料(不動産の使用料等の支払調書)2. 給与支払報告書:市区町村への住民税計算の基礎情報「給与支払報告書」は、昨年1年間に役員や従業員へ支払った給与額を、その従業員が住んでいる市区町村へ報告するための書類です。その内容は、タイトルが違えど従業員等へ渡す「源泉徴収票」と全く同じものです。なぜ提出が必要か? 市区町村は、この給与支払報告書に記載された情報をもとに、各従業員の住民税額を計算します。そして、決定された住民税額を会社に通知し、会社は6月以降、従業員の給与から天引き(特別徴収)して納付することになります。従業員の納税を会社が代行するための、非常に重要な手続きです。誰に提出するか? 従業員の1月1日時点での住所地の市区町村にそれぞれ提出します。複数の市区町村に従業員が住んでいる場合は、それぞれの市区町村へ提出する必要があるため注意が必要です。3. 償却資産申告書:事業用資産にかかる固定資産税の申告「償却資産」とは、会社が事業のために使用している土地や家屋以外の資産のことです。例えば、パソコン、コピー機、応接セット、工場の機械、店舗の内装設備などが該当します。これらの償却資産には、固定資産税の一種である「償却資産税」が課税されます。なぜ申告が必要か? 土地や家屋と違い、償却資産は市区町村がその存在を把握することが困難です。そのため、事業者自らが「このような資産を所有しています」と申告する必要があります。この申告内容に基づき、市区町村が税額を計算し、後日納税通知書が送られてきます。申告を怠ったり、内容に誤りがあったりすると、追徴課税や延滞金が発生する可能性もあるため、正確な申告が求められます。まとめ:1月は年末調整の総仕上げと新年度への準備期間1月は、年末に行った「年末調整」の結果を取りまとめ、税務署や市区町村へ報告する重要な月です。これらの手続きを正確に行うことで、従業員の税額が正しく計算され、会社としての義務を果たすことができます。創業間もない時期は、本業に集中したい気持ちが強いと思いますが、こうしたバックオフィス業務も経営の根幹を支える大切な仕事です。経理部などのバックオフィスがない創業期においては、顧問契約をしている税理士事務所がこれらの書類を用意・提出するのが通常です。しかしながら、任せきりにしていたが、契約の範囲外で提出をしていなかったということが後から発覚するという話をよく聞きます。早めに顧問税理士に相談しておきましょう。まずはこの1月の手続きをしっかりと乗り越え、2025年の事業を最高の形でスタートさせましょう。次回は「2月にやるべきこと」として、確定申告の時期の手続きについて解説します。