事業を始めるにあたって、または新たな成長を目指す上で欠かせないのが「事業計画」です。その中でも、まず最初に考えなければならないのが「売上目標」。しかし、単に「毎月〇〇万円売り上げるぞ!」と意気込むだけでは、具体的な行動計画に落とし込むのが難しく、絵に描いた餅になってしまいがちです。そこで今回は、事業計画の第一歩として、より現実的で達成可能な売上目標を設定するためのシンプルで効果的な手法、「因数分解」について、特に飲食店を例に挙げて解説します。なぜ売上目標を「因数分解」するのか?「因数分解」と聞くと数学のイメージが強いかもしれませんが、ビジネスにおいても非常に有効な考え方です。売上という大きな目標を、より小さな要素に分解していくことで、以下のメリットが生まれます。目標が具体的になる: 「何を」「どれだけ」やれば目標に到達するのかが明確になります。行動計画を立てやすくなる: 分解された要素それぞれに対して、具体的なアクションプランを考えられるようになります。進捗管理がしやすくなる: どの要素が計画通りに進んでいて、どこに課題があるのかを把握しやすくなります。関係者への説明が容易になる: 従業員や金融機関など、関係者に対して目標達成までの道筋を具体的に示すことができます。飲食店の例で見る!売上の因数分解例えば、あなたが飲食店を経営していて、月の売上目標を100万円に設定したとしましょう。この「100万円」を因数分解してみます。飲食店の売上は、基本的には以下の式で表すことができます。売上 = 客単価 × 来店客数これだけでも少し具体的になりましたね。次に、「来店客数」をさらに分解してみましょう。来店客数 = 席数 × 回転数 × 営業日数仮に、あなたの店の席数が20席、月の営業日数が25日だとします。この場合、目標売上100万円を達成するためには、100万円 = 客単価 × (20席 × 回転数 × 25日)という式が成り立ちます。もし平均客単価を2,000円と設定するなら、100万円 = 2,000円 × 500人 500人= 20席 × 回転数 × 25日 = 500席 × 回転数 回転数=1回転つまり、1日に平均して各席が1回埋まれば(1回転すれば)目標達成、ということになります。もし客単価が1,000円なら、2回転させる必要がある、という計算になります。さらに細かく!曜日や時間帯によるパターン分けしかし、現実はもっと複雑です。平日のランチタイムと週末のディナータイムでは、客単価も来店客数も大きく異なるはずです。そこで、より計画の精度を上げるために、曜日や時間帯でパターン分けをして、それぞれで目標値を設定することをおすすめします。例えば、平日ランチ: 客単価1,000円 × 席数20席 × 1.5回転 × 20営業日 = 60万円平日ディナー: 客単価3,000円 × 席数20席 × 0.8回転 × 20営業日 = 96万円 (目標に対して過達なので調整)週末ランチ: 客単価1,500円 × 席数20席 × 2回転 × 8営業日 = 48万円週末ディナー: 客単価4,000円 × 席数20席 × 1.5回転 × 8営業日 = 96万円上記はあくまで一例ですが、このようにパターン分けすることで、それぞれの状況に合わせた具体的な施策(例:平日ランチ限定セット、週末ディナー向けのコース料理開発など)を考えやすくなります。売上計画と経費の連動性も忘れずに重要なのは、売上目標を設定する過程で、それに見合う経費についても同時に考えることです。例えば、「来店客数を増やすためにGoogleや食べログで広告を打とう」と考えたとします。その広告費はいくらかかり、それによってどれくらいの来店増が見込めるのか? また、「客単価を上げるために高品質な食材を使おう」とすれば、仕入れコストが上昇します。このように、売上目標は、広告宣伝費、原材料費、人件費といった様々な経費項目と密接に関連しています。「このくらいの売上を達成するには、このくらいの広告費が必要だ」「この客単価を維持するためには、仕入れコストはこの範囲に抑えなければならない」といったように、売上と経費のバランスを常に意識することが、持続可能な事業運営には不可欠です。売上目標を因数分解して具体的な行動目標に落とし込むことは、事業計画策定の第一歩です。次回以降は、この売上計画と表裏一体となる「経費計画」について詳しく解説していきます。まずは、あなたのビジネスモデルに合わせて、売上を構成する要素を洗い出すことから始めてみましょう!