皆さん、こんにちは!今日から全5回で「会計の勘定科目」を分かりやすく解説するコラムを始めます。会計は事業の活動を金額で表現したもの。この連載で、決算書の基本となる勘定科目をマスターしましょう。第1回は、最も基本となる「売上(うりあげ)」と「仕入(しいれ)」です。1. 「売上」とは? – ビジネスの収益の源泉「売上」とは、企業が商品やサービスを提供することによって得られる代金の総額です。これがなければ事業は始まりません。いわば、会社に入ってくるお金の源泉であり、事業活動の成果そのものです。具体的に、どのようなものが「売上」として計上されるのか、様々な事業で見ていきましょう。小売業(例:アパレルショップ、書店):お客様が洋服や本などの商品を購入した代金が、そのまま売上になります。レジで支払う金額をイメージすると分かりやすいでしょう。飲食業(例:カフェ、レストラン):お客様が注文したコーヒーやランチ、コース料理などの代金が売上です。お店で提供される飲食サービスの対価ですね。サービス業(例:美容院、コンサルティングファーム):美容院であればカットやカラー、パーマなどの技術料、コンサルティングファームであれば顧客への助言や提案に対する報酬が売上となります。製造業(例:自動車メーカー、食品メーカー):自社で製造した自動車や加工食品などを、ディーラーや卸売業者、あるいは直接消費者に販売して得た代金が売上です。IT業(例:SaaS企業、システム開発会社):月額や年額で提供するソフトウェアサービスの利用料や、受託して開発したシステムの対価などが売上として計上されます。このように、業種や提供する価値によって「売上」の具体的な内容は異なりますが、すべて事業の主たる営業活動から得られる収益であるという点は共通しています。2. 「仕入」とは? – 売上を作るためのコスト次に「仕入」についてです。「仕入」とは、販売する目的で購入した商品や、製品を製造するために調達した原材料・部品などの取得価額を指します。簡単に言えば、売上を得るために直接かかった費用(コスト)のことです。こちらも事業別に具体例を見てみましょう。小売業(例:スーパーマーケット、家電量販店):店頭に並べて販売するためにお店が購入した野菜、肉、魚、お菓子や、テレビ、冷蔵庫などの商品そのものの購入費用が仕入です。飲食業(例:パン屋、居酒屋):パンを作るための小麦粉やバター、イーストなどの材料費や、お客様に提供する料理に使用する肉、野菜、魚介類、お酒などの購入費用が仕入にあたります。製造業(例:家具メーカー、アパレルメーカー):家具を製作するための木材や塗料、ネジなどの部品代、洋服を縫製するための生地や糸、ボタンなどの購入費用が仕入です。サービス業の場合、有形の商品を転売するわけではないため、小売業や製造業のような典型的な「仕入」という勘定科目はあまり使いません。しかし、例えばWeb制作会社が、ウェブサイト制作のために有料の画像素材を購入したり、プログラミング作業を外部の業者に委託したりした場合、これらは仕入に類似した費用として処理されることがあります。3. 「売上」と「仕入」の関係 – 利益の第一歩会計を理解する上で、「売上」と「仕入(売上原価)」の関係性を把握することは非常に重要です。なぜなら、この二つの金額の差が、事業の最も基本的な利益を示すからです。「売上高」から、その売上を得るために直接かかった費用である「売上原価(主に仕入高)」を差し引いたものを、「売上総利益(うりあげそうりえき)」と言います。これは一般的に「粗利(あらり)」とも呼ばれます。計算式で表すと以下のようになります。売上総利益=売上高−売上原価(主に仕入高)例えば、ある商店が80円で仕入れた商品を100円でお客様に販売した場合、売上高は100円、売上原価(仕入高)は80円となり、売上総利益は20円(100円 - 80円)となります。この売上総利益が大きいほど、その事業の基本的な収益力が高いと言えます。なお、よく「利益率」や「原価率」という言葉を耳にしますが、上記の例ですと、利益率は20%(=20円/100円)、原価率は80%(=80円/100円)となります。もちろん、企業が最終的に得る利益は、この売上総利益からさらに人件費、家賃、広告宣伝費などの販売費及び一般管理費を差し引いたものになりますが、その全ての計算の出発点となるのが、この「売上」と「仕入(売上原価)」なのです。まとめ今回は、会計の勘定科目の中でもビジネスの根幹をなす「売上」と「仕入」について、様々な業種の例を交えながら解説しました。どのような事業を行うにしても、自社の売上がどのように発生し、そのためにどのような仕入(コスト)がかかっているのかを正確に把握することが、経営状態を理解し、改善策を考える上での第一歩となります。次回は、日々の事業運営で発生する様々な経費である「販売費及び一般管理費(販管費)」のうち、主要部分である「人件費」について詳しく解説していきます。どうぞお楽しみに!