皆さん、こんにちは!足掛け5回にわたりお届けしてきた「ビジネスの羅針盤!会計の勘定科目入門」も、いよいよ今回が最終回となりました。第1回では「売上と仕入」、第2回では「人件費」、第3回では「交際費と会議費」、そして前回第4回では「減価償却費」と、ビジネスの根幹をなす重要な勘定科目を一つずつ見てきました。最終回の本日は、これまで個別に解説してきた人件費、交際費、会議費、減価償却費以外の「販売費及び一般管理費(販管費)」に含まれる主要な勘定科目について、具体的な例を挙げながらご紹介していきます。販管費は、企業が事業を運営し、商品やサービスを販売するために不可欠なコストですが、同時に利益を圧迫する要因ともなり得るため、その内容をしっかり理解し、適切に管理していくことが経営の安定と成長には欠かせません。多岐にわたる費用項目を一緒に見ていきましょう!1. 「販売費及び一般管理費(販管費)」とは?(おさらい)「販売費及び一般管理費(はんばいひおよびいっぱんかんりひ)」、略して「販管費(はんかんひ)」とは、企業が商品やサービスを販売するための活動(販売活動)と、会社全体を維持・運営していくための活動(一般管理活動)に要した費用のうち、売上原価に算入されない全ての費用を指します。損益計算書では、売上総利益(粗利益)からこの販管費を差し引くことで、企業の本業での儲けを示す「営業利益」が計算されます。つまり、販管費の金額は営業利益の大きさに直接影響を与えるため、経営において非常に重要な管理対象となるのです。2. これも重要!販管費の主な勘定科目それでは、これまで取り上げてこなかった販管費の主な勘定科目を具体的に見ていきましょう。これらも企業の日常活動において頻繁に発生する費用です。旅費交通費(りょひこうつうひ) 役員や従業員が業務のために移動する際にかかる費用です。日々の出金のために購入した定期代、出張時の新幹線代や航空券代、宿泊費、日当(出張手当)、あるいは近隣の取引先へ訪問するための電車代、バス代、タクシー代などが該当します。通信費(つうしんひ) 業務上の情報伝達のために発生する費用全般を指します。具体的には、固定電話や社用スマホの通話料・基本料金、インターネットの料金や回線使用料、郵便料金(切手代、はがき代、書留など)、宅配便の料金やサーバー利用料などが含まれます。水道光熱費(すいどうこうねつひ) 事業所や店舗などで使用する電気、ガス、水道の料金です。オフィスの照明や冷暖房、パソコン等の電力、店舗のショーケースの電力、飲食店の厨房でのガス代や水道代など、事業を運営していく上で不可欠なライフラインの費用と言えます。消耗品費(しょうもうひんぴ) 比較的短期間で消費されたり、取得価額が少額(一般的に10万円未満、または使用可能期間が1年未満)であったりする物品の購入費用です。具体例としては、事務用品(ペン、ノート、コピー用紙、ファイル)、ティッシュペーパーや石鹸、洗剤などの日用品、電球や蛍光灯、少額の事務用備品(マウス、キーボードなど)が該当します。地代家賃(ちだいやちん) 事業を行うために借りているオフィスや駐車場などの賃借料です。事務所や店舗の家賃、工場の賃料、倉庫の賃料、月極駐車場の料金、社宅として借りている物件の家賃(会社負担分)などがこれにあたります。多くの企業にとって、毎月固定的に発生する大きな費用の一つです。支払手数料(しはらいてすうりょう) 金融機関への振込手数料や口座振替手数料、各種証明書(登記簿謄本や印鑑証明書など)の発行手数料、クレジットカードの加盟店手数料など、特定のサービス利用に伴って発生する比較的小額な手数料を指します。また、最近ではクラウド型のシステム利用料や、SaaSと言われるシステムの月額利用料なども支払手数料に計上したりします。なお、弁護士や税理士への相談料や簡単な書類作成依頼料などもここに含める場合がありますが、顧問契約に基づく継続的な支払いは「支払報酬」などの科目で処理されることもあります。広告宣伝費(こうこくせんでんひ) 自社の商品やサービスを広く一般に知らせ、その販売を促進するために支出する費用です。テレビCMやラジオCMの放送料、新聞・雑誌への広告掲載料、インターネット広告(リスティング広告、ディスプレイ広告、SNS広告等)、チラシやパンフレット、カタログの制作・配布費用、展示会への出展費用、ノベルティグッズの製作費などが代表例です。租税公課(そぜいこうか) 国や地方公共団体に納める税金(租税)や、商工会議所や同業者組合などの公共的な団体等へ支払う会費や賦課金など(公課)のことです。具体的には、固定資産税、都市計画税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、収入印紙代、事業所税などが該当します。ただし、法人税、法人住民税、法人事業税(所得に応じて課される部分)は、販管費ではなく、税引前当期純利益から差し引かれる形で処理されます。保険料(ほけんりょう) 事業活動に伴う様々なリスクに備えるために加入する各種損害保険の保険料です。事務所や店舗、工場、商品などにかける火災保険料、社有車にかける自動車保険料(自賠責保険料、任意保険料)、従業員の業務中の事故に備える傷害保険料、賠償責任保険料、店舗休業保険料などが含まれます。なお、従業員の健康保険や厚生年金などの社会保険料の会社負担分は「法定福利費」として人件費関連で処理されます。修繕費(しゅうぜんひ) 会社が所有する建物や機械装置、車両運搬具、工具器具備品などの固定資産が故障したり、劣化した箇所を修理したり、通常の維持管理(メンテナンス)のために支出する費用です。例えば、事務所の壁の塗り替え、雨漏りの修理、パソコンの修理代、コピー機の保守点検料、機械の部品交換などが該当します。ただし、修理や改良によってその資産の価値が明らかに高まったり、使用できる期間(耐用年数)が大幅に延長されたりするような支出は「資本的支出」として資産計上され、減価償却の対象となる場合があります。福利厚生費(ふくりこうせいひ) 従業員の福利厚生、つまり働きやすい環境づくりや生活支援のために支出される費用で、給与や賞与といった直接的な労働対価以外で、原則として全ての従業員に公平に供されるものが該当します。社員旅行の費用補助、社内レクリエーション費用、慶弔見舞金(結婚祝金、出産祝金、傷病見舞金、香典など)、忘年会や新年会の費用補助、社宅の提供(家賃の一部を会社が負担する場合の差額など、法定福利費以外の部分)、法定外の健康診断や人間ドックの費用補助などがあります。リース料(りーすりょう) コピー機や複合機、パソコン、サーバー、自動車、機械設備などをリース契約によって借り受けて使用している場合に、リース会社へ定期的に支払う料金です。資産を直接購入するよりも初期投資を抑えられるというメリットがありますが、契約期間中の支払い総額や契約終了時の資産の扱い(買い取り、再リース、返却など)を事前にしっかり確認する必要があります。3. 販管費管理の重要性ここまで見てきたように、販管費には非常に多くの種類があります。これらの費用は、一つひとつは少額に見えるものでも、積み重なると大きな金額となり、企業の利益を大きく左右します。売上を伸ばす努力と共に、これらの費用を適切に管理し、無駄を省くことは、営業利益を確保し、企業体力を強化する上で不可欠です。ただし、広告宣伝費や研究開発費(これも販管費に含まれる場合があります)など、将来の収益獲得や企業成長に必要な戦略的な投資まで抑制しすぎないよう、削減すべき経費なのか、逆に増やすべき経費なのかバランス感覚を持った管理が求められます。4. 最後に~会計はビジネスの羅針盤~全5回にわたり、「ビジネスの羅針盤!会計の勘定科目入門」というテーマで、ビジネスの基本となる会計の勘定科目をみてきました。売上から始まり、仕入、人件費、交際費・会議費、減価償却費、そして今回の様々な販管費まで、一つひとつの勘定科目が企業の経済活動を具体的に映し出すことがイメージできましたでしょうか?ビジネスを始めたばかりは当然そうは見えないと思いますが、税理士事務所との面談を通じたり、日々、自社の決算書を眺めていると、だんだんと金額の意味が理解できるようになり、「想像していたより〇〇の経費をかけすぎているな」とか、「今月は忙しかったので利益が出ていると思ったが、やっぱりそうか!」など、数字とイメージがリンクしたり、または違和感を感じ取れるようになりって、数字を自社の経営に活用できるようになってきます。会計の知識は、税理士事務所や経理担当者だけのものではありません。営業、マーケティング、開発、経営企画、そして会社経営者にとって、自社の状況を客観的に把握し、課題を発見し、的確な意思決定を下すための協力なツールとなります。この連載が、皆さんの会計に対する興味や理解を少しでも深め、日々の業務や経営にお役に立てたなら、これ以上の喜びはありません。会計の世界は奥深く、常に変化もしています。ぜひ、この連載を一つのきっかけとして、これからも主体的に学びを深めていっていただければと願っています。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!皆さんのビジネスが成功裡に進むことを心より応援しております。