こんにちは。事業計画コラム、前回は売上に応じて変動する「変動費」について解説しました。事業計画を練る上で、経費の見積もりは売上計画と並んで非常に重要です。今回は、経費のもう一方の柱である「固定費」に焦点を当て、その内容と見積もり時の注意点について詳しく見ていきましょう。固定費とは?~売上の波に左右されない経費~固定費とは、その名の通り、売上の増減に関わらず、毎月あるいは毎年、ある程度決まって発生する費用のことです。変動費が売上の増減に比例して上下するのに対し、固定費は売上がゼロでも発生し続けるという特徴があります。この固定費をいかにコントロールするかが、事業の安定性や収益性を大きく左右します。では、具体的にどのようなものが固定費に該当するのでしょうか。主要な項目を以下に挙げます。人件費: 役員報酬 従業員の給料・賃金、賞与 法定福利費(社会保険料の会社負担分など) 地代家賃:オフィス、店舗、工場、倉庫などの賃借料、共益費減価償却費:建物、機械装置、車両運搬具、ソフトウェアなどの固定資産を、耐用年数にわたって費用として計上するもの。実際に現金支出が伴わない月もありますが、会計上は費用として認識されます。リース料:コピー機、パソコン、社用車などのリース費用システム利用料:サブスクの毎月の利用料支払利息:金融機関からの借入金に対する利息保険料:火災保険、賠償責任保険など、事業に必要な各種保険の掛金租税公課:固定資産税、自動車税、印紙税などの税金広告宣伝費(一部):企業のブランドイメージ向上や認知度アップを目的とした広告など、短期的な売上に直接結びつかないものその他:通信費(スマホ、インターネット、固定電話)、水道光熱費、旅費交通費、事務用品費、消耗品費など、売上との直接的な連動性が低い経費これらの項目は、事業を行う上で継続的に発生するものが多く、事業の基盤を支えるためのコストと言えます。固定費のよくある誤解:「金額が固定」だけではない!ここで、固定費に関してよくある誤解について触れておきたいと思います。それは、「固定費=毎月支払う金額が完全に一定の費用」という思い込みです。確かに、家賃やリース料のように毎月同額が引き落とされるものは分かりやすい固定費です。しかし、水道光熱費や消耗品費のように、月によって支払額が変動する費用であっても、その増減が売上の増減と直接的に比例しない場合は、「固定費」として扱われるのが一般的です。例えば、オフィスの電気代を考えてみましょう。夏場や冬場はエアコンの使用で電気代が上がることがありますが、これは季節的な要因であり、必ずしも「売上が増えたから電気代が上がった」わけではありません。同様に、事務用のコピー用紙や文房具などの消耗品費も、多少の増減はあっても、売上が2倍になったからといって消耗品費もきっちり2倍になるわけではありません。変動費か固定費かを判断する上での重要なポイントは、「その費用が売上高の増減に直接的に比例して変動するかどうか」という点です。この基準で自社の経費を分類し、正確に把握することが、精度の高い事業計画策定には不可欠です。固定費を把握するメリット固定費を正確に把握することには、事業計画を策定する上で必須となりますが、それ以外にも以下のような経営を行う上でのメリットがあります。丁寧にリスト化して金額を見積もってみましょう。目標利益を決めやすくなる:固定費が分かれば、それをカバーするために最低限必要な売上高を計算できます。これは、事業の採算性を判断する上で非常に重要な指標です。専門的な表現では”損益分岐点”を知ることになります。事業の安定性評価:固定費が低いほど、売上が多少落ち込んでも利益を確保しやすく、事業の安定性が高まります。コスト削減のターゲット設定:固定費は一度発生すると削減が難しいものが多いですが、定期的に見直しを行うことで無駄を発見し、コスト削減につなげることができます。特に事業開始時には、本当に必要な固定費なのかを慎重に吟味することが重要です。価格戦略への活用:固定費と変動費を把握することで、適切な販売価格を設定するための基礎情報となります。まとめ今回は、事業計画における「固定費」について、その内容と注意点を解説しました。固定費は、売上の増減に関わらず発生し続けるため、その額が大きすぎると経営を圧迫する要因になりかねません。一方で、事業を継続し成長させていくためには必要不可欠な投資でもあります。自社の事業にとって本当に必要な固定費は何か、無駄な支出はないかを見極め、適切に管理していくことが、安定した事業運営と収益性向上のための重要な鍵となります。次回は、これまでに解説した「売上」「変動費」「固定費」の計画をどのように連動させ、事業全体の収益計画を立てていくのかについてお話しする予定です。どうぞお楽しみに。