「事業が少しずつ軌道に乗ってきた。次の成長のためには、新しい仲間が必要だ。でも、採用活動をしても全く良い人からの応募がない…」創業経営者にとって、「人」に関する悩みは尽きることがありません。特に、最初の“社員”や“仲間”集めは、極めて重要な経営課題です。しかし、多くの経営者がありがちな「採用の穴」に落ちてしまい、抜け出すための貴重な時間とコストを浪費してしまっています。今回は、創業期の会社が陥りがちな採用の誤解を解き、本当に自社を成長させてくれる「仲間」と出会うための考え方についてお話しします。■ その「優秀な人材」、本当にあなたの会社に来ますか?採用を考えるとき、多くの経営者が「即戦力になる優秀な人材が欲しい」「業界経験豊富な人に来てほしい」と考えがちです。もちろん、その気持ちは痛いほど分かります。すぐにでも忙しい社長の代わりになって会社の売上を倍増させてくれるような、スーパーマンを求めてしまうのは当然のことでしょう。しかし、一度立ち止まって冷静に考えてみてください。あなたが「優秀だ」と思う人材は、おそらく他のどこの会社も求めている人材です。特に、大手企業や、より高い給料を支払える資金力のある会社は、そうした人材を是が非でも採用したいと考えています。採用市場とは、いわば人材の争奪戦です。体力もブランド力もこれから、という創業したての会社が、潤沢な資金を持つ大企業と同じ土俵で引く手あまたな人材を取り合って、果たして勝算はあるでしょうか?残念ながら、その競争は極めて厳しいと言わざるを得ません。■ 視点を変える。「優秀な人」から「自社に合う人」へでは、創業期の会社はどうすればいいのか。答えは、「戦う場所を変える」ことです。つまり、採用における「優秀」の定義そのものを変えるのです。私たちが本当に探すべきは、一般的な物差しで測られる「優秀な人材」ではありません。探すべきは、「私たちの会社にとって、最良の仲間となってくれる人材」です。創業したての会社は、いわば業界の新参者です。であれば、同じように「業界未経験だけど、この業界で頑張っていきたい」と熱意を持っている挑戦者や、「少し経験はあるけれど、もっと裁量のある環境で自分の力を試したい」と考えている成長意欲の高い人材に目を向けてみてはどうでしょうか。彼らこそ、完成された組織ではなく、未完成な自分たちの船に共に乗り込み、一緒に未来を創っていける、かけがえのない仲間となる可能性を秘めています。■「新参者の集まり」こそ、最強のチームになる「経験の浅い人ばかり集めて、お客様に価値を提供できるのか?」と不安に思うかもしれません。しかし、心配は無用です。特に、創業期の小規模な会社における組織力は、個々人のスペックの総和で決まるわけではありません。良くも悪くも、経営者であるあなたの手腕が、組織のパフォーマンスに極めて大きく影響します。あなたのビジョンは何か。どんな価値をお客様に届けたいのか。その考えを、経験の浅いメンバーに伝え、共に成長し、導いていくことこそ、創業経営者の最も重要な仕事の一つです。経営者が「育成担当」として正しく機能すれば、たとえ「新参者の集まり」だったとしても、既存の大企業にはないスピード感と一体感、そしてチームワークをもって、お客様に十分な価値を提供できる組織を作ることが必ずできます。給与や福利厚生では、まだ大企業にかないません。だからこそ、私たちは「社長の考えへの共感」や「共に成長できる環境」「挑戦できるカルチャー」といった、お金では買えない価値で仲間を集めるのです。採用とは、単なる労働力の確保ではありません。会社の未来を共に創る「メンバー」を探す挑戦です。みんなが欲しがる高嶺の花を追い求めるのではなく、あなたの会社に本当に必要な、あなたの考えに共鳴し、一緒に頑張ってくれる、原石のような人材を探しに行きませんか。(この記事は6日間連続コラムの2日目です。明日は【時間管理】「時間がない!」社長が“自分の時間”を取り戻すタイムマネジメント術をお届けします。どうぞお楽しみに!)