7月は経営者として対応すべき重要な手続きの締切が集中する、非常に忙しい月となります。特に、年に一度の社会保険の「算定基礎届」の提出と、源泉所得税の納期の特例を受けている場合の「上半期分源泉所得税の納付」は、絶対に忘れてはならない2大イベントです。今回はこれらの手続きを中心に、7月にやるべきことを詳しく解説していきます。なお、労働保険の「年度更新」も提出期限は7月ですが、詳細は6月分のコラムでご案内した通りとなります。内容が複雑な年度更新は、6月中に済ませてしまいましょう。1. 最重要!社会保険「被保険者報酬月額算定基礎届」の提出(7月1日~7月10日)6月編で準備開始をお伝えした「算定基礎届」の提出期間がいよいよ到来します。これは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料計算の基礎となる「標準報酬月額」を、年に一度、実態に合わせて見直すための非常に重要な手続きです。算定基礎届とは? 毎年7月1日現在の被保険者について、原則としてその年の4月・5月・6月に支払われた給与(報酬)の月平均額を算出し、これに基づいて新しい標準報酬月額を決定(これを「定時決定」といいます)し、日本年金機構へ届け出るものです。なぜ必要か? 昇給や手当の変動などにより、実際の報酬と既に設定されている標準報酬月額との間に大きなズレが生じないように、定期的に見直しを行うことで、保険料の公平性を保ち、適正な保険給付を行うためです。提出期間:2025年7月1日~ 7月10日対象者: 原則として、7月1日現在の全ての健康保険・厚生年金保険の被保険者です。 ただし、以下に該当する方は、原則として今回の算定基礎届の提出対象外となります。①6月1日以降に被保険者資格を取得した方 ②7月、8月、または9月に、固定給の変動などにより月額変更届を提出する(提出した)方③育児休業等により保険料の徴収が免除されている方(一部、提出が必要なケースもあります)提出書類: 「被保険者報酬月額算定基礎届」事前に日本年金機構から、被保険者情報が印字されたものが送付されてくるので、そちらを活用しましょう。記入のポイント: 4月・5月・6月に支払った報酬月額: 基本給だけでなく、役職手当、通勤手当、残業手当など、労働の対償として支払われるすべてのものを含みます(現物支給のものも含む)。 各月の支払基礎日数: 月給者の場合は暦日数、日給・時給者の場合は出勤日数となります。原則として支払基礎日数が17日未満の月は算定対象から除外しますが、短時間労働者の場合は11日未満の月を除外します。 備考欄の活用: 3ヶ月の平均と前年の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたが月額変更に該当しない場合や、低額の休職給を受けた場合など、特記事項がある場合は備考欄に記載します。提出方法: 電子申請(e-Gov): 大変便利で推奨されています。24時間受付可能です。 郵送または窓口持参:最寄りの年金事務所へ持参します。もっともベーシックな方法です。この届出の影響は? ここで決定された新しい標準報酬月額は、原則としてその年の9月から翌年8月までの各月の社会保険料の計算や、将来受け取る年金額、傷病手当金や出産手当金などの保険給付額の計算基礎となります。非常に重要な手続きですので、正確な記入と期限内提出を徹底しましょう。2. 源泉所得税及び復興特別所得税(上半期分)の納付期限(7月10日)源泉所得税の納期の特例(従業員が常時9人以下の事業所が対象)の承認を受けている事業主の方は、1月1日から6月30日までに源泉徴収した所得税及び復興特別所得税を、まとめて納付する期限が迫っています。納付期限:毎年7月10日納付内容: 1月~6月分の給与・賞与、税理士や弁護士などへの報酬から源泉徴収した所得税及び復興特別所得税の合計額。納付方法: 金融機関または所轄税務署の窓口で納付書を利用して納付をするか、e-Taxを利用したダイレクト納付やインターネットバンキング経由での電子納税があります。期限までに納付しないと、不納付加算税や延滞税などのペナルティが課される場合がありますので、必ず期限内に納付しましょう。なお、納期の特例を受けていない事業主の方は、通常通り、6月中に支払った給与等に係る源泉所得税及び復興特別所得税の納期限が、同じく7月10日となります。3. 【最終リマインド】労働保険の年度更新 申告・納付期限(7月10日)6月1日から手続き期間に入っている「労働保険の年度更新」ですが、その申告・納付期限も7月10日です。 まだお手続きがお済みでない場合は、まとめて対応しましょう。まとめ:7月は重要手続きの締切ラッシュ!計画的な対応で乗り切ろう!7月は、社会保険の「算定基礎届の提出」、源泉所得税の「上半期分納付(納期の特例の場合)」、そして「労働保険の年度更新の最終期限」と、年に一度の重要な手続きの締切が重なります。これらの手続きは、従業員の社会保険料や将来の給付、そして国の税収に関わるため、どれも正確かつ期限内に行うことが経営者には求められます。創業間もない時期は特に、一つ一つの手続きの意味を理解し、適切に対応していくことが難しいものもあると思います。もし、手続きについて不明な点や不安なことがあれば、決して自己判断せず、管轄の年金事務所、税務署、労働局、または顧問の社会保険労務士や税理士にご相談ください。次回は、「8月にやるべきこと」として、新しい標準報酬月額の通知や、社会保険料の改定に伴う給与計算への反映準備などについて解説します。