創業経営者の皆様、新年度の4月、桜の美しいこの季節は、新たな始まりの時期でもあり、企業にとっては新入社員を迎え入れたり、あるいは退職者を見送ったりと、人の動きが活発になる時期でもあります。そこで今回は、創業経営者が4月に特に注意すべき「従業員の入退社に伴う社会保険・労働保険の手続き」について、具体的に何をすべきかを詳しく解説していきます。これらの手続きは、従業員が安心して働くための基盤であり、企業の法的責任を果たす上でも非常に重要です。なぜ社会保険・労働保険手続きが重要なのか?社会保険(健康保険・厚生年金保険)や労働保険(雇用保険・労災保険)は、病気、ケガ、失業、労働災害など、従業員が直面する可能性のある様々なリスクに備えるためのセーフティネットです。これらの手続きを適切に行うことは、従業員の安心と信頼につながる: 福利厚生の基本であり、従業員が安心して業務に専念できる環境を提供します。企業の法的義務を果たす: 法律で加入が義務付けられており、手続きを怠ると罰則や追徴金のリスクがあります。採用力の強化: きちんとした労務管理は、企業の魅力となり、優秀な人材の確保にも繋がります。最近では大分へりましたが、以前は社会保険や労働保険に未加入の法人も少なくありませんでした。多くの企業が当たり前に加入しているので、加入していないとなると、転職希望者から「選ばれない会社」となってしまいます。創業期は何かと業務が多岐にわたりますが、これらの手続きは後回しにせず、正確かつ迅速に行うことが肝心です。そして、ご自身で行っている時間がない場合には、社会保険労務士が専門としておりますので、サポートを仰ぎましょう。従業員を採用したとき(入社時)の手続き新しいメンバーを迎える際には、以下の手続きが必要です。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き対象者: 原則として、常時雇用される従業員。また、パート・アルバイトであっても、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である場合は加入対象となります(従業員数によってはさらに短時間労働者も対象となる場合があります)。 提出書類: 「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」提出先: 管轄の年金事務所または事務センター提出期限: 採用日(事実発生日)から5日以内 なお、被扶養者がいる場合は、「健康保険被扶養者(異動)届」も併せて提出しましょう。 手続き完了後、年金事務所の混み具合にもよりますが概ね2週間程度で健康保険証が交付されますので、速やかに従業員へ渡しましょう。労働保険(雇用保険)の手続き対象者: 以下の両方を満たす従業員 1週間の所定労働時間が20時間以上であること 31日以上の雇用見込みがあること提出書類: 「雇用保険 被保険者資格取得届」提出先: 管轄のハローワーク提出期限: 被保険者となった日(採用日)の属する月の翌月10日まで主な添付書類・確認書類: 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、雇用契約書など(ハローワークから指示がある場合)その他入社時に必要なこと労働条件通知書の交付:勤務開始前にはなりますが、賃金、労働時間、休日などの主要な労働条件を明示した書面を交付しましょう。入社してから認識の相違があると、お互い不幸ですので、事前に目線を合わせておくことは重要です。 法定三帳簿の整備: 労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカードなど)を整備し、適切に管理します。従業員が退職したときの手続き従業員が退職する際には、以下の手続きが必要です。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き提出書類: 「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」提出先: 管轄の年金事務所または事務センター提出期限: 退職日(事実発生日)の翌日から5日以内回収・返却物: 健康保険証(本人及び被扶養者分)。速やかに回収し、資格喪失届に添付または別途返却します。労働保険(雇用保険)の手続き提出書類: 「雇用保険 被保険者資格喪失届」また、 本人が離職票の交付を希望する場合(または退職時の年齢が59歳以上の場合)には「雇用保険被保険者離職証明書(離職票)」も併せて提出します。離職票には、退職理由や直近の賃金支払状況などを記載します。提出先: 管轄のハローワーク提出期限: 被保険者でなくなった事実があった日(退職日)の翌日から起算して10日以内退職者へのアナウンス(任意ですが親切です)退職後の健康保険について、国民健康保険への加入や、一定の条件を満たせば元の健康保険を任意継続できる制度があることを情報提供すると、従業員はスムーズに次のステップに進めます。4月の税務関連トピック社会保険手続きがメインとなる4月ですが、税務関連でもいくつか動きがあります。固定資産税の納税通知書: 所有している土地や家屋、償却資産にかかる固定資産税の納税通知書が、例年4月~6月頃に市区町村から送付されてきます。各地方自治体によって通知の時期は異なります。軽自動車税(種別割)の納付: 軽自動車を所有している場合、4月1日時点の所有者に対して課税され、納税通知書が送られてきます。納期限は多くの自治体で5月末日です。まとめ:手続きは迅速・正確に!4月は新年度のスタートであり、人の動きに伴う事務手続きが集中しやすい時期です。特に社会保険・労働保険の手続きは、従業員の生活に直結するため、期限を守り、正確に行うことが求められます。これらの手続きをしっかりと行うことで、従業員が安心して働ける環境を整備し、企業としての信頼性を高めることができます。もし、手続きの方法や判断に迷うことがあれば、年金事務所、ハローワーク、社会保険労務士または税理士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。